Staff Column
クラフトビールの醸造家になる-Part4-店舗改装その1
免許を申請するには、醸造できる環境がありますよ、ということを証明しなければなりません。
しかし現状は、物件改装に全く手がついてない状態でした。
しかも使用する醸造機材は既に発注してしまったので、ドイツからの船便が到着するまでにはせめて醸造場側だけでもなんとかなってないとヤバい状況です。
急遽、設計士・S山さんに、店舗の配置と醸造場に必要な広さを加味した設計案を作っていただきました。
麦芽をマッシュするタンクの大きさや、内釜を取り出す際に必要なスペースはどれぐらいか?
発酵タンクを4台設置した上で、効率が良い作業スペースをどれだけ確保できるのか?
プレハブ冷蔵庫は大きすぎても小さすぎてもダメで、樽のサイズと人が通るスペースがどれだけあるかをシミュレーションしたりしながら設計いただきました。
そこそこ余裕、なんて思っていた敷地面積でしたが、物を置いていくうちに、これはかなりギュウギュウなことになりそうで、購入した機材が本当に入るのか、不安になってきました。
しかし、S山さんからの「大丈夫、なんとかします」なんて頼もしい一言に救われたりして、5月ごろにようやく設計プランが完成しました。

タップルームにするつもりの店舗側は図面の左サイドにありますが、ここでは醸造場のみご紹介します。
図面の「ブラウマイスター」という奴が、麦芽をマッシュするためのマッシュタンクです。
このタンクは優れものです。
内釜と外釜に分かれており、内釜に麦芽を投下してマッシュした後、内釜をクレーンで持ち上げて取り出せば、糖化させた麦汁をそのまま煮沸工程へと進めることができます。
温水を貯めるタンクと煮沸用のタンクを必要としないので小さな醸造場にとってはスペースを稼げるありがたいシステムです。
図面をベースに、S山さんの懇意にしている施工会社に見積もりをとっていただくことにしました。
待つこと2ヶ月……。
なかなか出てこないのはなぜ?!というほど待ちまして、ようやく出てきた見積もりに驚愕しました。
『高い……思っていた以上に高すぎて払えない……』
それもそうです。
1階だけの改装ならまだしも、2階をキッチン付きのシェアオフィスにしてサブスク登録で小金を稼ごうなんていう構想を持っていたものですから、改装面積が想像以上に膨らんでいたのです。ちなみに皆さんはご存知かもしれませんが、私はいわゆる「施工会社」と言う立ち位置について、よくわかっていませんでした。
施工会社にお願いすれば全部その会社の方が担当してくれるものと思っていましたが、実際に手を動かすのは大工だったり、電気技師だったり、水道会社だったりするわけで、それらの人々を手配して計画通りに進行させるお役目を担うのが施工会社なんですね。
いわば、映画制作のプロダクションが施工会社。
そのプロダクションのプロデューサーが、監督やキャメラマン、照明マン、美術、メイク、衣装、助監督、なんてプロの人たちを集めてそれぞれに活躍してもらう感じ。
見積もりを出してくれた会社さんは、ギリギリの見積もりではなく、ある程度余裕を持たせた予算を組むものと理解はしてましたが、さすがに施工の1つ1つに数字をつけて積み上げていくとこうなります、と言う予算を前にやや思考停止に陥りました。
計画を大幅に変更するか、何か他の手立てはないものか……。
そんなおり、近所の商店街で、たった一人で店舗の工事作業をしている人を見かけました。
コロナ禍の、夏真っ盛りです。
『あのおじさん、汗だくになって一人で改装して。おじさんが自分の喫茶店でも始めるのかな……』と思いながら、夏中眺めていたのですが、ある日、雰囲気のある外装の店が出来上がっていて驚愕!
好奇心に駆られて中を覗くと、良い感じの女性二人と談笑してます。
『!? もしかして、おじさんの店じゃない?』
と言うことは、かのおじさんは一体何者?
確かめずにはいられなくて思い切って扉を開けて、声をかけてみました。
女性二人によると、その店はこれから定食屋さんを始めるとかで、おじさんは彼女たちのお知り合いで大工であると。
しかも俳優でもあったりで、所属されている芸能プロは私も仕事をしたことがある会社。
こんな僥倖は滅多にないと食らいつきました。
「ここが終わったら、私の物件も改装工事してもらえませんか?!」
と頼み込みました。
ー続くー