Staff Column

クラフトビールの醸造家になる-Part9-日本の規格と外国製は違う-その3

日本の製品は『JIS』という国家規格の定めによって製造されています。
『JIS』。
このコラムを読んでくださっている皆さんも、なんとなく聞き覚えのある単語だと思われますが、『JIS』とは、日本の製品やサービスの品質および安全性を担保するように定められた共通のルールであり、国際規格の『ISO』と整合性が図られているとされています。
なんだか複雑になってきたぞ。
Google先生に問い合わせますと、以下のような回答がありました。

『ISO規格を基に、日本国内で分かりやすく適用されるように翻訳・制定されたものがJISであり、JIS規格を守ればISO規格にも適合しますが、日本特有の規格や寸法が残っている場合もあります。』

ふむ……。
さらにこんな記述もあります。

『日本独自の要件や伝統的なサイズを反映したJIS規格も存在します。例えば、用紙のB版サイズや一部のねじの寸法などは、ISO規格とは異なる場合があります。

お分かりでしょうか……?
ネジの寸法などは、とサラリと書かれていますが、これが結構な問題でして。
そもそも、管用ネジには『テーパーねじ』と『平行ネジ』の2種類があるそうですが、ネジにそんな分類があるなんて知る由もなく。
さらに、ネジのサイズの呼び方もメートル法だけではなく、インチ表示や、職人さんが使う「呼び径」と言われる言い方もあるそうで。
兎にも角にも、素人の私が説明するより、ネジの複雑さについて下記に専門家のブログをご紹介します。
https://d-monoweb.com/blog/standards-tapered-threads/

記事を読むとネジのサイズ規格について、GとかPtだのRだの、呼び方がバラバラです。
これに職人さんが使う俗称があったり、A呼称(ミリメートル基準)、B呼称(インチ基準)なんていうサイズの表記方法がさまざまあったりなど、複雑怪奇!
さらに、ヨーロッパは日本のJIS規格に対応しているけれど、アメリカのNPTという基準のネジは、ネジ山の高さやネジ山間のサイズも違うらしいなどなど……。
ネジ1つに大混乱で、この変換だけでおよそ4ヶ月を費やすことになります。

さて、購入したタンクおよびバルブのサイズは「1インチ」です。
そして「平行雄ネジ」です。
上の画像は、バルブを取り付ける発酵タンクの開口部を測っているところですが、1インチ=25.4mmです。
これに、下記の手書きの変換想定図を用意して、さまざまな業者や会社に問い合わせをしました。

試しに大抵のものはなんでも揃う「●ノタロウ」で『1インチ 配管継手 平行 雌ネジヘルール』を検索してみてください。
出てきません!

工具系の専門店でプロも使う「●ーナン足立店」にも行ってきました。
そもそも、日本ではサイズの表記はメートル法なので、インチサイズで「平行雌ネジ」は一般には取り扱いがないと説明を受けました。

ということは、『DIN』の継手を『へルール』に変換したくても、目当てのへルールが手に入らない?!
マッシュタンクから発酵タンクへどうやって麦汁を移送させるのか?まさに途方に暮れました。

そんなおり、継手を扱っているとある会社を発見。
問い合わせをしまして、醸造場まで足を運んでくださいました。
実際に現物を見てもらって、合いそうな継手を選定いただくことができました。
現実には雌ネジで平行ネジは扱ってないということでしたが、なんとか捻じ込んだら使えるかもということで、試しに1つ購入して実験してみました。
すると、液漏れなし。
これは行けるぞ?

平行ネジ同士を接続するとオスメス同士、際限なくネジがはまってしまうため、結局は液漏れします。
それを防ぐためにパッキンを使用するとのこと。
なるほどです……。
試しに発酵タンクの雄ねじにバルブのメスねじを取り付ける際、パッキンを中に仕込まないと液漏れすることがわかり、納得がいきました。

2021年から22年にかけて、専門家に聞けばなんとか前進する、そんな年末年始を送りました。

                 ー続くー